
非常に〈Orange Milk〉らしい、脱臼メロウ・ファンク・ポップ・チューン。vaporwave同様、この手の音楽は記名性を剥いで剥いで剥いだ先に何があるのか、興味深く見守り続けているのだけど、さて。まあ、サン・アロウの例もあるしな……というかスタローンズの新作にとても似てる。

今年もピッチが早い〈Digitalis〉。ザラついたビートにフィールド・レコーディングスらしきアンビエント、インダストリアルな反復をかましたり、ドローン、テープ・ループ&逆回転……と手数は多彩。総体ではきわめて〈Digitalis〉らしく、いい意味で捉えどころなし。

〈Chill Mega Chill〉ってレーベル名もたいがい。前身はドローン/アンビエントをしていたらしいが、その名残も湛えつつ、アブストラクトなトラック/ビート・メイク寄りに作風をシフト。チルというより普通にエレクトロニカっぽい。90年代にシカゴや〈Thrill Jockey〉周りでよく見かけたような。

同レーベルから。ヴォーカルの“食えなさ”が鼻につくが(いい意味で)、ファズの効いたフォーキィ・ポップは嫌いじゃない。トラックにも配慮の跡が。タイトルが「農園主」だしね。

ポルトガルの〈A Q U A E〉から。ロイ・モントゴメリーも引き合いに出されるリヴァービーなギター・アンビエンス。ローレン・マザケインやヴィニ・ライリーの反響も。

「Meili Xueshan」のコンピでも見かけた気鋭。ポスト・D/P/I、なんてモードもつい浮かんでしまうサンプリングやインダストリアルな感覚、ビートやノイズはやはりとても今っぽい。ざらざらとした物音感。名義はスーザン・ボイルを意識してんのかな知らん。

なにげに歌声がイーノっぽい。レイモンド・スコットやR・スティーヴィー・ムーアに通じる匂いを漂わせた宅録風情のメロウ・ポップ・シンガー。

〈Sic Sic〉や〈Constellation Tatsu〉からのリリースでお馴染みドイツのアンビエント作家。揺りかごに乗せられて遠くの惑星軌道をゆっくり周回するようなモジュラー・シンセの満ち引きは、子供の頃の記憶とジャック・ケルアックの小説をインスピレーション源にしているのだとか。

Expo ’70のジャスティン・ライトによる〈Sonic Meditations〉から。音色深いギター・ドローンにのせ、チェロやオルガンも重ねられた重層的な響きはポスト・クラシカルな趣も。音自体はミニマルだが、その空間の使い方が優雅で贅沢。

オハイオのマルチ・メディア・アーティスト。ハイブロウなノイズ/ミュージック・コンクレート作品だが、パーフォマンスの実況録音を聴くような臨場感も。プリペアードの4チャンネルステレオを使った聴覚の拡張。

Speedy Ortizを最近抜けたギタリストのプロジェクト。ローファイでダウナーなギター・ロック、という部分はSpeedy Ortizに通じるものがあるが、あの灰の中にダイヤモンドの鉱脈を掘り当てるようなメロディの輝きはあらず。また経過報告か。

カリフォルニアの〈Rotifer〉から。儀式音楽のようなタイコに、鳥の囀りや川のせせらぎを採取したフォールド・レコーディングス、ときおりヴェイパー風の歌謡サンプリングを織り交ぜたA面に悪酔い。B面もフィールド・レーディングス/サンプリングは多用されているけれど、ぐっとアンビエントな仕上がり。

ニューヨークのデュオ。一言でいえば、かなりド直球のライアーズ・フォロワー。インダストリアルへの回帰を受けてライアーズ再評価の追い風が吹いているのかも。ヴォーカルの歌い方もかなりまんまだなあ。

シカゴの〈Hausu Mountain〉から。ゴソゴソ、というかモゾモゾと効果音がしぶきを上げるようなタイニー&ストレンジなサンプリングのオノマトペは、どこかサン・アロウの新作にも通じるものが。

Tiny Music Tapesのリポートで見かけて以来、気にかかっていたドローン/インダストリアル・プロジェクト。LAの〈Nostilevo〉からリリースされた一本。テープ・ヒスに染み付いた鉛色のモワレ、不安定なピッチの上でサンプリング/ヴォーカル・エフェクトがおどろおどろしくハウリングを起こす。ウルフ・アイズから元気やる気をぶっこ抜いたような、ただただぼんやりとしたノイズが延々と。

UKの〈Opal Tapes〉から。匂い立つようなダーク・アンビエント。銀残しのような音像、インダストリアルとトライバルを止揚したような音像・ビートはシャックルトンを連想させる場面もあるが、よりモノトナスな感覚が打ち出されているよう。官能性も湛えた、荒々しい物音の響きよ。

レーベル・トータルとしては、じつは評価を保留したいところがなくもないUKの〈Astro:Dynamics〉。OPNらに続く先鋭的なエレクトロニック・ミュージックの輩出先としても注目を集めるが、こちらはなんというか、アブストラクト・ヒップホップといった印象も先立つ。フォー・テット・ミーツ・アンチコン、みたいな。

暗渠にしずくを落とす工業廃水。いわゆるダーク・アンビエントの類いだが、エレクトロニクスに窺えるほのかなsci-fiなタッチが耳の残る。象印の〈Elephant〉から。

カリフォルニアの〈Rotifer〉から。ヴォリュームとペダルを弄りながら逆回転とアンプリファイを繰り返す前後不覚のシンセ・ウェイヴ。半角スペースを使ったプロジェクト名やタイトルが思わせぶりだが、ざらざらと粒子の粗い音像にはヴェイパーウェイヴの亡霊、ニュー・エイジの逝き遅れによる断末魔の叫びが捉えられているよう。

ノルウェーのエレクトロニック・デュオ。ウォーミーで典雅な音色も湛えた電子音響だが、白夜が人を狂わせるような不穏な瞬間も垣間見せ、たとえば80年代ジョン・カーペンター映画作品のサウンド・トラックを引き合いに出されるレヴューもちらほら。

話題の〈Noumenal Loom〉から。映画『アビス』も連想させるMVも印象的なドイツ在住のドローン・アンビエント~ニュー・エイジ作家。この電子で濾過されたような瑞々しいスピリチュアリズム、未来的な響きは、しかし、あっという間に過去の遺物へ、ノスタルジーを喚起させる残影となるのだろうな。

“失われた&発掘された音”とでも訳すのだろうか。キーボードやオルガンのループに乱れたラジオ短波を重ねたような来歴不明の音の藻屑。〈Sublime Frequencies〉とか、この手の音源を現地採取した際のアウトテイクとしてたくさん所蔵してそう。

以前はSimianという名義で活動していたらしいSimon Lordによる、ヴィンテージの4トラック・テープで録音されたという作品。〈Astro:Dynamics〉のレーベル・イメージからするとかなりポップな方なのでは。エレクトロニックなレイヤー、ヴォーカルの多重録音で飾られたウォーミーなアンビエンス。

ベルリン&メルボルンを拠点に活動するマルチ・メディア・アーティスト。環境音楽めいたというか、これといって主張するところのない(?)アンビエント・ミュージックはモダンというより古風な佇まいも感じさせ、この作家の主戦場は「音楽」ではなくあくまで「アート」なのかも、という印象。

プチ・ブーム中の〈Rotifer〉から。モントリオールのコラージュ作家Daniel Leznoffによる一本。ドリーミーでSci-Fiなテイストはこのレーベルの傾向だが、ハーモニーやシンセのコード感とかとりわけポップ。

アイスエイジ周辺のコペンハーゲンのアンダーグラウンド・シーンは目下個人的な関心事のひとつだが、同郷で運営の〈Skrot Up〉からリリースされる本作は、それらとまったく印象が異なる。クラスター風情の牧歌的なシンセの音色に、カシオやアタリやニンテンドー・リスペクトなゲーム音楽~チップチューンへのシンパシーが掛け合わされた、ともかくゆるい電子音楽作品。伸びきったうどんのようなヴォーカルはサン・アロウっぽくも。

Food Pyramidでお馴染みミネアポリスの〈Moon Glyph〉から、そのFood PyramidのChristopher Farstadによるビート・ミュージック作。Sci-Fiなシンセ・アンビエントが後退し、ベース・ミュージック的なフットワークでアップリフティングさせる。

個人的にはご無沙汰の〈NNA Tapes〉。けれど14人編成のストレンジ・ポップというのは同レーベルでも異色かと。エンニオ・モリコーネの映画音楽に影響を受けたとか云々というエピソードも頷ける。ボストンはマサチューセッツ発。

〈No Corner〉から。ブリストルからの〈100% Silk〉への返答? パラノイアックなミニマル・ハウス/テクノ。

うっすらメンヘラ?の香りも漂う、、、ミネアポリスの宅録ゴシック・フォーク。ブライアン・イーノに捧げられているトカナントカ書かれているが、はたして。ヒスりまくりのヴォーカル・ハーモニーもおどろおどろしい。
(※2014年4月のカセット・レヴュー)
(※2014年3月のカセット・レヴュー)
(※2014年2月のカセット・レヴュー)
(※2014年1月のカセット・レヴュー)
(※2013年の熟聴盤(カセット・リリースBEST 30+α))
(※2012年の熟聴盤(カセット・リリースBEST 30+α))
(※2011年の熟聴盤(カセット・リリースBEST 30+2))
(※極私的2010年代考(仮)……“カセット・カルチャー”について)
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