2012年5月1日火曜日

2012年5月のカセット・レヴュー(随時更新予定)

◎Troller/ST
オースティンのユニット。喩えるならヨンシーを暗転させたようなダーク・ウェイヴ/ウィッチ・ハウス趣味。個人的には去年のベストの一本。






◎Eternal Dreamer/Splintered Sunlight
GrouperやMotion Sickness Of Time Travelとも比較されるフィーメイル・アンビエント・ドローン。ベクトルは一時のフリー・フォーク向きだが、土着の肌触りは柔らかく、そして濡れている。



◎FEATURELESS GHOST/Biologically-Sound Cyber-Bodies
そういやCLASHの最新号の見出しに「sci-fiが云々……」とありページを捲ったが見つからず、、、というわけでBest Hits改めFEATURELESS GHOST。二人羽織で見せるゲイリー・ニューマンのロボットダンス、、、という趣。



◎Many Moons/Former Selves
先鋭的な映像手法でビデオ・アーティストとしても活動する西海岸のPaul Skomsvold。Motion Sickness Of Time Travelでもお馴染みのHooker Visionから。明鏡止水のアンビエント・ドローン。







◎K.A.N.T.N.A.G.A.N.O./Se résigner au silence extraterrestre
果たして何者か。Alexander WilsonやAlexandre St-Onge、Jonathan Parantに関わるといことからカナダ~モントリオールのアンダーグラウンドと密なコネクションがあると想像できるが、謎。ハーシュというかピーキー音が粛々と続く27分のA面、コラージュも塗した怪奇映画のサントラを展開する27分のB面。うーん、、



◎Black Velvet Stereo/Metal Rain Machine
USのSacred Phrasesから。骨が震える(Bone-chilling)ような感覚…とはレーベルいわく。アルバム・タイトルはルー・リードのギター・ノイズを連想させるが、拡張や開放ではなく、まんじりともしない緊張と持続感は聴覚をますます悪酔いさせるよう。







◎Crabskull/Jovian Black Opera

沈降と倦怠のダウンテンポ。テープヒスの彼方で木霊するオペラ声のサンプリング。スロウモーションなサード・アイ・ファウンデーションのような瞬間も。


◎Aloonaluna/Bunny
Hooker Visionから。カリフォルニアの才媛Lynn Fisterによるソロ。GrouperやMotion Sickness Of Time Travelに連なる系譜だが甘くやわらかな歌声と音色は子守唄のよう。チャイルディッシュなビートはニカな趣も。“水色のウサギ”なんて曲名も愛らしい。

◎Back to the Future the Ride/Neutrino Based Lifeforms
裸族Foot Village&Gang Wizardのメンバーによる暗黒ドローン・プロジェクト。映画『ツインピークス』にインスパイアされたという冒頭曲からさもありなん。かたや音楽家リンチのフォーキーな歌心とは、まったくもって、、、


◎Kon Tiki Gemini/Azure Maze
またもHooker Visionから。Ivan KaribとSergei Dmitrievのデュオ。パンダ・ベアの“Comfy In Nautica”をドローン・アンビエントに描き直したようなA面が至福。



◎Leslie Keffer/Kim Gordon/Thurston Moore/Keffer Gordon Moore
夫婦ユニット=Mirror/Dashを横軸方向に延長した、サーストンは両手に花のフリーノイズインプロヴィゼーション。アートワークを飾るキムのドローイングも素晴らしい。離婚してもこういう形で関係を続けて欲しいものだけど。。。


◎Raccoo-oo-oon/Death at Prospect Peak
旗艦Night Peopleを主宰するアイオワのフリーフォーム・ノイズ・パンカー。最初期のギャング・ギャング・ダンスも彷彿させるが、ブルックリンのモダンではなく、そこはやはりスリップノットと同郷なのだな……と改めて。



◎Mef Teef/Implied Brain-Flex
Night Peopleから。Andy Spore率いるフリーキー・サイケ・ジャズ・コンボ。90年代シカゴ~スリル・ジョッキーへのフリー・フォーク経由USアンダーグラウンドからの応答。ある種、ボルビトマグース風情というか。


◎Time Life/Gripstone
Wooden Wand & The Vanishing Voiceでお馴染みThe Vanishing Voiceの方の別働隊?的なデュオ。ギター・ループとテープ・マニュビレートを絡ませたミステリアス・セッション。フロムNY。



◎Harmonizer/s/t
片割れはGreg Davis。サンプルを噛ませたレイヤード・エレクトロニクスは流行りのシンセ・ポップにも目配せしつつ、ビート処理はテクノ経由の初期エレクトロニカ仕込みというのがGreg Davisならでは。KrankyからNNA Tapesへ、というラインにも注目。


◎Pulse Emitter/Longing Thresholds
ポートランドのヴェテラン。アナログ・シンセを塗り重ねた甘くメロディックな電子音響。しかしかの地の充実ぶりときたら……90〜2000年代とはまた異なる文脈からポートランドのアンダーグラウンドは見直されることでしょう。


◎Eklin/Onwa
オランダ発。クラウト・ロック~ジャーマン電子音響とポスト・ロック・スタイルの美しき邂逅。ドローンやアンビエントの作法も織り交ぜながら、ミニマルなビートに身を委ねて揺らぐ女性Voはジュリア・ホルターや流行りのシンセ・ポップに通じる感覚も。



◎Dead Luke/Cosmic Meltdown
近作ではブルージーなローファイ歌謡を聴かせるマジソン出身。タイトルの通りユルフワに蕩けたサウンをサイケでガレージなジャムが転がす、というか漂う。まるでカート・ヴァイルとギャリー・ウォーをミックスしたような。



◎Ryan Garbes/Endless Bummer
Night Peopleを主宰するRaccoo-oo-oonのドラマーによるソロプロジェクト。アコギのループにノイジー&パーカッションを噛ませたハードコアはライトニング・ボルトと聴き紛うピークも創出。 本体譲りのハイテンションでぶいぶいと。



◎Watersports/Natural History
ニューヨークはクイーンズの男女デュオ。その正体はブルース・コントロールの前身にあたるニューエイジ・プロジェクト。シンセやコングが鳴る鳴る静謐系ミニマル・ミュージックは禅の境地も垣間見せる。初期は喜太郎に例えられたというエピソードもさもありなん、か。



◎Dylan Ettinger/Botany Bay

最近Not Not FunからCDがリリースされたばかりのDE。同作品も然りだが、昨今のUSアンダーグラウンドはダブとニューエイジをいかんなく溶接し、あまつさえハードルをも下げる。それはしかしフリー・フォークがノイズやドローンと接続を見せたのとは対極に位置する同根異花の現象、か。ヒプナゴジックな云々諸々の相貌を衛星の位置関係に置きつつ、これはエレクトロニック・ミュージックが迎えた新たな潮流のひとつ。


◎Sand Circles/Motor City
ことMartin Herterichの2作目はNNFからリリース。マーチン・レヴとクラスターがシンセディスコをアンビエントに敷衍。タイトルはデトロイトを想起させるがガソリンや排ガスの臭いとは無縁。サイバーパンク的な光沢感は未来世紀のマシーン・ミュージックを彷彿させる。


◎Aphid Palisades/II
Ryan ConnollyとLee Tindall,のデュオによる2作目。“ニューウィアード(新しく奇妙な)・カナダ”を標榜する(と一部で話題の)コズミック・シンセ・ドローン。



◎Blue Angels/Isidora
Digitalisのリミテッドラインから。 シューゲイズを溶かし込んだ疾走感あふれるドローン・ポップ。同じUKのファック・ボタンズからバレアリックなビートを抜き、グローイングをさらにアンビエント寄りにしたような。





◎Black Zone Myth Chant/Straight cassette
High Wolfこと何某の別プロジェクト。ジェームズ・フェラーロをチョップド&スクリュード。ハイプ・ウィリアムスもかくやたるスモーキン・ドローン・ダブ。 しかし何某、フランスとブラジルのハーフ?クォーター?ってホントなのかしら。


◎Cellophane Spill,/s/t
“キャバレー・ヴォルテール・ミーツ・クラウス・ノミ”とも評されるオースティンのエレクトロニクス。 アナログ・シンセとヴォコーダーを操り、美と諧謔の黄昏へ訥々と。



◎ARBOL TRANCEMISSIONS/CODE: SUITE 104/split
BサイドはHobo Cultを仕切るFrank Ouelletteのニュープロジェクト。いわゆるシンセ~アンビエント系のスプリットだが両者の嗜好はエレクトロニカ寄り。後者はスログリ風の雑音趣味も。


◎Duck Dive/Interpolarity
そのホーボー・カルトから100本限定のリリース。アヒルの入水?なんて自然科学の教材のようなプロジェクト名だが、期待を裏切らないニューエイジ・テイストのシンセ・エクスペリメンタル。



◎Design/Hangin'
NNFから100%Silkへ、という流れは個別に好きなアーティストもいるしアンダーグラウンド史的にも興味深いと思いつつ、半分乗り切れていないところがあるのだけど、このディスコ~ダンス・ミュージックをカセットで、それも今の時代、という一連はやはり面白い。カリフォルニアのデュオによるアシッディーなディープ・ミニマル。


◎White Poppy/I Have A Dream
NNFからヴァンクーヴァーのCrystal Dorvalによるプロジェクト。ドリーム・ポップとヘヴィー・サイケのまがまがしきマリアージュ。耳あたりは甘く、オーシーズがヒプナゴジアを擬態したような感覚も。



◎Nuojuva/Otavaiset Otsakkaha
Hooker Visionからヘルシンキの鬼才。テープループを重ね、マルチ・インストゥルメンタルに編まれた美しく霊妙なアンビエント。モーション・シックネスのレイチェル・エヴァンスがゲストVoで華を添える。



◎Dolphins Into The Future/A Star Maker, Strange Dreams, And Clairvoyance
最近はFonalからもリリースする未来派イルカ群。環境音や現地録音のポリフォニーを編み込みアンビエンタルな薄明のシークエンスを演出。ニューエイジというよりはゴシックな趣も。













2012年4月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
2012年3月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
2012年2月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
2012年1月のカセット・レヴュー(随時更新予定))
極私的2010年代考(仮)……“カセット・カルチャー”について)
2011年の熟聴盤(カセット・リリースBEST 30+2))

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